(質問)
不貞の妻の婚姻費用でも支払う必要がありますか?
(回答)
以前、別のページで、たとえ別居していても婚姻関係にある限り、収入の高い側(たとえば夫)は収入の低い側(たとえば妻)に対する扶養義務があり、この扶養義務の一環として、別居中の生活費(法律上は婚姻費用といいます。)の支払いをする必要があることを説明しました。
では、婚姻費用を請求する側に、不貞のような法的な落ち度のある場合にも、一切支払いを拒絶することはできないのでしょうか。
このような場合であっても、直ちに婚姻費用の請求が認められなくなるわけではありません。
婚姻費用は、夫婦が婚姻関係にあることから生じる日々の生活を維持するための費用であり、請求する側に法的な落ち度のあることは、別途慰謝料等の問題として考慮されるべきであると考えられるからです。
もっとも、裁判例では、不貞をして家を出た妻から婚姻費用の請求がされた事案において、婚姻費用請求者がもっぱらまたは主に婚姻関係の破綻を招いたといえる場合には、その配偶者に対する扶養義務は否定すべきと判断して、妻が連れて行った子らの生活費のみを認めたものがあります。
ですから、ご質問の場合にも、妻が不貞に至った事情等によっては、妻に対する扶養の必要はないと主張しうる場合があると考えます。
但し、その場合にも、妻が帯同した子には何の落ち度もありませんので、子らの分の扶養は行うべきでしょう。